コラム

障がい3区分+発達障がいとは?
― 障害者総合支援法と障がい特性について ―

「障害者総合支援法」とは、障がいを持つ方への支援について定めた法律です。
障がいを持つ方が日常生活や社会生活を円滑に営むことができるよう、障害福祉サービスによる給付や、地域生活支援、その他の必要な支援を総合的に受けられる旨が記されています。
対象となる障がいの範囲は、身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む)、政令で定める難病等により障がいを持つ方で、いずれも18歳以上が対象です。
障がいには種類が多く、ひとくくりにすることはできませんが、内閣府では障害者施策を行ううえで障がいの種類を大きく3つの区分に分けています。

障がい3区分+発達障がいとは?
ここでは、3つの区分である身体障がい、知的障がい、精神障がい、そして3区分に含まれる発達障がいの特性について解説します。
身体障がい
「身体障害者」の定義は「身体障害者福祉法」により、次のようにされています。
① 視覚障害、聴覚または平衡機能の障害、音声機能、言語機能又はそしやく機能の障害、肢体不自由、内部障害、これら身体上の障害がある者
② 上記の身体障害を有している18歳以上の者で、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたもの
ここでは理解をしやすくするために、主な「身体障害」の特性を種別ごとに紹介していきます。
【視覚障がい】
視覚障がいとは、視覚機能が永続的に低下していることで、学習や生活に支障がある状態をいいます。
学習面では、動きをまねること、文字の読み書き、物事の確認などに困難を感じ、生活面では、慣れない場所をひとりで移動すること、物や人の位置、動きをすぐに知ることに難しさや不便さを感じています。
また、視覚障がいには、全く見えない「全盲」や、見えにくい「弱視」、色覚異常や視野狭窄などさまざまな種類があり、同じ視覚障がいであっても症状や程度をひとくくりにすることはできません。
視覚障がいのある方のなかには、盲導犬や家族、ガイドヘルパーを伴う方や、白杖を使用する方がいる一方で、外見ではわかりにくい方もいます。
【聴覚・言語障がい】
聴覚障がいとは、身の周りの音や話し声が聞こえにくかったり、ほとんど聞こえなかったりする状態をいいます。
聴覚障がいのある方には、全く聞こえない方や、片耳は聞こえる方、特定の音域が聞こえない方、補聴器で聞こえを補っている方などがおり、症状や障がいの程度はさまざまです。
総じて音声からの情報取得が困難な点を特徴としています。
言語障がいは、音声器官が十分に機能しないために、発音が不明瞭であったり、話し言葉のリズムがスムーズでなかったりするなど、言葉でのコミュニケーションに支障が生じている状態のことをいいます。
なかには脳出血や脳梗塞などにより失語症を発症するケースや、聴覚障がいのある方が音を聞き取れずうまく発音ができないケースも少なくないと言えるでしょう。
【肢体不自由】
肢体不自由とは、身体の動きに関わる器官が病気やけがで損なわれ、日常生活動作が困難な状態をいいます。
日常生活動作に支障を感じない方から、起立や歩行、筆記や物の持ち運びに困難を感じている方、日常動作の多くに介助を必要とする方など、障がいの程度や症状は人によってさまざまです。
障がいの原因や部位、発症時期も一人ひとり異なりますので、個々人が求めるサポートや困りごとの種類に応じた対応が必要とされます。
【内部障がい】
内部障がいとは、体の内臓機能が病気やけがで損なわれ、日常生活のなかで困難を感じている状態をいいます。 内部障がいの定義は「身体障害者福祉法」において、肢体不自由以外の身体の内部の障害と定められており、また、機能障害の範囲は心臓、じん臓、呼吸器、ぼうこう又は直腸、小腸、免疫及び肝臓の7種類とされています。
なかには継続的な医療ケアを必要とする方や、体力が低下し疲れやすい方、長時間の移動など身体に負担を伴う行動が制限されている方もいるなど、障がいの程度や症状は多様です。
そのため、個々人が必要とするサポートや対応法にも違いがあります。
また、外見上では障がいがあることに気づかれにくいことも多いため、最近は内部障がいがあるとわかるマーク(ヘルプマークなど)をつけている方も増えています。
ペースメーカーや人工呼吸器、インスリン注入ポンプなどの医療機器を使用している方もいますので、支援の際には本人への配慮事項の確認が必要です。
知的障がい
「知的障害者福祉法」とは、「知的障害者」への支援を目的に制定された法律です。
具体的には、「知的障害者」の自立と社会経済活動への参加を促進し、必要な保護や支援を行うなどの福祉を図ることを趣旨としています。
「知的障害者福祉法」において、どのような障がいの範囲が「知的障害者」「知的障害」に当てはまるのかという定義はなされていません。
そのため、対象となる障がいの範囲は、都道府県知事が交付する療育手帳(「知的障害児・知的障害者」が各種の支援を受けるために必要な手帳)の交付対象となるかを判定した結果を採用する形になっています。
各自治体では、医学分野の診断基準をもとに療育手帳の交付対象を判定していますが、自治体によっては判定基準や手帳の名称に若干の違いがあります。
【知的障がいの特性】
先天的または発達期に知的機能の障がいが現れ、学習や日常生活においてさまざまな困難を抱えているのが特徴です。
なかには抽象的な考えを理解することや、社会的または実用的な領域において物事を判断すること、問題解決や計画を立てることなどを苦手に感じる方もいます。
社会的なルールを理解できず、奇異に映る言動を取ることもありますが、けして周囲を困らせようとしているわけではありません。
周りで起きていることを理解するのが難しく、混乱することがありますが、外見上で判断することが難しいため、時に誤解を招くこともあります。
精神障がい
「精神障害」や「精神障害者」の定義は、行政や福祉、医療の分野において異なる部分があります。
精神障がいには多くの種類があり、同じ人が複数の障がいを持つことも珍しくなく、すべてを明確に分類し、定義をすることは困難です。
「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(精神保健福祉法)では、「精神障害」の範囲を「統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有するもの(第五条)」と定めています。
医療分野においては、WHO(世界保健機関)の国際診断基準(ICD-10)の「精神および行動の障害」や、あるいは米国精神医学会のDSM-5による「精神障害の診断と統計マニュアル」に記述されている診断基準に基づくもの、と定義しています。
一方、「精神障害者」についての定義を定めているのは、「障害者基本法」です。
「精神障害があるため、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受けるもの(第二条)」と定められています。
【知的障がいの特性】
精神障がいのある人は、精神活動に関わる身体や心の機能の変調などにより、日常生活のなかでさまざまな生活のしづらさを抱えています。
精神障がいの主な精神疾患として、統合失調症や気分障害(うつ病、躁うつ病(双極性障害))、せん妄、パニック症などが挙げられます。
症状に波があることが多く、不調が強く出てしまう時には、外出することや人と会うことに難しさを感じたり、物事の判断や行動のコントロールに支障をきたしてしまったりなど、一人ひとりが直面している困難はさまざまです。
発症の原因や発症時期、症状や程度も人により異なりますが、適切な治療や服薬、周囲からの配慮によって症状をコントロールできることも多いため、大半の方が治療を受けながら日々の生活を安定的に過ごしています。
発達障がい
「発達障害支援法」とは、発達障がいの症状が現れてから早期に発達支援を図ることを目的に制定された法律です。
この法律では発達障害の定義を、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」としています。
ここでは理解をしやすくするために、主な発達障がいの種類や特性を紹介していきます。
【自閉症】
自閉症とは、①他者と社会的関係を形成することの困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわること、などを特徴とする発達の障がいです。
コミュニケーションの場面では、言葉や視線、表情、身振りなどを用いた相互的なやりとりや、自分の気持ちを伝えること、相手の気持ちを読み取ることに困難を感じています。
また、感覚の過敏さを持ち合わせている場合があり、特定の刺激に対しての敏感さ、鈍感さが現れることもあります。
3歳くらいで症状が発現することが多いのですが、大人になってから症状が顕在化することもあるなど、発症時期や障がいの程度は人により異なります。
【アスペルガー症候群】
自閉症の特徴のうち言葉の発達の遅れを伴わず、かつ、知的発達の遅れを伴わないことが特徴の対人関係の障がいです。
対人関係の事柄に困難を感じ、限定された常同的な興味や行動、活動をすることがあります。
具体例としては、他者と会話をしている時に自分のことばかり話してしまい、相手からはっきりと「もう終わりにしてください」と言われないと止まらないなどのケースです。
けして周囲を困らせようとしているわけではありませんが、外見上ではわかりにくいため、時に誤解を招くことがあります。
しかし、自分の興味関心のある分野については専門家顔負けの知識を持っているケースも多く見られます。
【学習障がい】
知的発達に遅れはありませんが、聞くことや話すこと、読み書きや計算、又は推論する能力のうち、一つないし複数の特定の能力の習得や使用に著しく困難がある状態です。
学習障がいには3つのタイプがあり、①文字を読むことに障がいを伴う、②文字を書くことに障がいを伴う、③算数の障がいを伴う、などに分けられます。
学習障がいには的確な診断や検査が必要とされており、一人ひとりの認知の特性に応じた対応が必要です。
最近は学習障がいを「Learning Differences(学び方の違い)」と呼ぶ人たちもおり、異なる学習アプローチをとる、という特性を言い表しています。
【注意欠陥多動性障害】
年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、衝動性や多動性を特徴とする行動の障がいです。
主な特徴として、発達年齢に比べて落ち着きがない、待てない(多動性―衝動性)、注意が持続しにくい、作業にミスが多い(不注意)などが挙げられます。
多動性−衝動性と不注意の両方が認められる場合や、いずれか一方が認められる場合もあるため、障がいの程度や症状は多様です。
けして周囲を困らせようとしているわけではありませんが、社会的な無理解から誤解を受けるケースも多いと言えます。
7歳以前に症状が現れることが多く、その状態が継続し、社会的な活動や学業の機能などでさまざまな困難に直結しています。

●まとめ
障がいにはさまざまな種類があり、一人ひとりの障がい特性は異なります。
障がいや障がい特性の多様性を認識しながら、人それぞれの個性を知ることが大切です。
また、行政では障がいの種類を大きく3つの区分に分けて、支援や福祉の施策を行っています。
地域生活支援や福祉サービスを利用する際には、主な障がいの種類や特性について把握しておくと良いでしょう。

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